「ありがとう。正直に話してくれて嬉しい」
五千万を返す必要はないといことが分かって、私は正直ホッとしていた。
実のところ、返せる当てなんて全くなかったのだ。今は嘘を責める気持ちよりも、安心感の方が強かった。
「ねえ、私達もう一度最初からやり直さない?」
もし、志信くんに“カグヤ”ではなく私のことを思いやってくれる気持ちが少しでもあるのならば。
今までとは違う……新しい関係が築けると思うの。
信じたいの。ううん、信じさせて。
運命の先にあるものが悲劇ばかりでないことをこの目で確かめたい。
志信くんは私の提案に呼応するかのように戒めを解くと、正面から向き直ってくれた。
「傍に……いて欲しいんだ」
……その言葉に嘘偽りはなかった。
だから、私も正直に答える。
「うん。いるよ」
……志信くんが望んでくれる限りずっと傍にいる。
みっともなくてもいい。誰かに窘められたって構わない。
私は眠らない夜を越えて、終わらない夢を見る。
いつか志信くんに“愛している”と伝えられる日がやってくるまで。
「また、星を見に連れてってくれる……?」
「ああ」
迷いのない返事に嬉しくて、つい涙が零れそうになった。
誤魔化すように志信くんの胸の中に飛び込んで、力一杯息を吸う。
今度街に出掛けたら、買い損ねたあの白いワンピースを買おう。
きっと彼は褒めてくれるに違いない。
これが、私にとって一生に一度、最後の恋になる。



