「それにしても、舞を教えて欲しいだなんてどういう風の吹き回しだ?」
志信くんは等身大のお人形と化した私を右へ左へと器用に操りながら尋ねた。
身を委ね安心しきっていた私は羞恥で頬を桜色に染めながら答えた。
「志信くんの舞が綺麗だったから……」
……舞っている時はどんな気持ちでいるのか余計に知りたくなったのだ。
焦げ茶色の瞳の奥には何が映っているの?
「“月天の儀”の間は、待っていることしかできないから……。せめて……」
……同じ刹那を分かち合いたいと思う。
運命の悪戯か、単なる偶然か。私達の世界は交わってしまった。
もう、出逢う前には戻れない。
ならば、もっと志信くんを感じていたい。
こんなことを思うのはおこがましいけれど、誰よりも近く寄り添っていたい。
(やだ……。私って自分で思っているよりずっと……)
自分の想いを改めて自覚していると、背後からぎゅうっと力強く抱きすくめられた。



