背中に感じる志信くんの気配に、頬が熱くなるのを感じた。神聖な場所を邪な想いで汚しているのは他ならぬ私自身である。
……なんでこんなに覚えが悪いんだ。
教えて欲しいと強請ったのはこちらの方なのに、投げ出してしまいそうになって自己嫌悪に陥る。
「やっぱり素人がやろうとすると難しいね」
「神事だからって気負いすぎなんだよ。ダンスを踊るような軽やかな気持ちでいればいい」
神に愛され力を授けてもらっている志信くんだからこそ、何でもないことのようにさらりと言えてしまうのだ。神と交流する術を持たない私には恐れ多い。
「緊張しちゃうわよ。神様に見られているもの」
“月天の儀”で現れた光の玉は今も庭の中で息づいていて、私達を見張っている。
「心配するなよ。神もあんたの舞の前では平伏すことになるさ」
「もう……茶化さないでよ……」
お世辞にも上手とは言えないことは百も承知である。
私の舞のぎこちなさといったら、身体に針金でも仕込んであるんじゃないかと疑いたくなってくるほどだ。
先ほどからクツクツと笑いを噛み殺している志信くんを振り返って睨みつける。
「ちょっと!!いつまでも笑いすぎじゃない!?」
「悪い悪い」
口では悪いと言っていても謝っているようには聞こえない。口元は今にも緩みかけているではないか。
(こっちは真剣にやっているのに!!)
ツンとそっぽを向いていると、志信くんが機嫌を損ねた私を宥めるように手に鈴を持たせてくれた。
身体を動かすたびに聞こえる美しい旋律にしばし酔いしれる。



