<俺を信じて欲しい>
志信くんの声が頭の中でこだますると、もやがかかっていた視界がパッと開けたような心地がした。
豊姫から身体を離して、正面に向き直る。
「志信くんは……他の“カグヤ憑き”と違うわ……」
私には分かった。
志信くんは醜い傷痕を厭わず優しく撫でてくれた。年のことなんか気にせず名前を呼んでくれた。身体の芯まで蕩けるような甘いキスをくれた。
どれも、嘘なんかじゃない。私にとってかけがえのない真実だった。
“小夜、あなた……?”
豊姫が驚きの詰まった表情で私を見ている。
(ごめんね)
心の中でひたすら詫びる。
……もう、迷わない。
たとえ、彼が極悪非道な人間だとしても、それすら許してしまえる。
「行かなきゃ……」
私は、信じて欲しいと言った志信くんを信じる。



