今宵も、月と踊る


“そうよ。志信があなたにしたことと同じね、小夜”

離れに滞在するようになった経緯を豊姫が知っていることよりも、志信くんがかつての“カグヤ憑き”と同じ方法を取っていたことに動揺している。

“そうやって何代にも渡って悲劇が繰り返されてきたのよ。あの人達は奪って手元に置きさえすればカグヤの心が手に入ると信じているのよ、バカみたいにね。そのくせ自分たちは呪いの被害者だって言い張るの!!”

「どうしてそこまでして……」

一体、“カグヤ”の何が“カグヤ憑き”にそんな行動を取らせるのか?

私は胸に橘の形をした痣を持っていること以外は、普通の人間にすぎない。

“カグヤにはカグヤ憑きの心が半分宿っているの”

トンと指で胸元を指差されると、仄かに痣が光った。信じられない光景に、思わず豊姫の顔を凝視する。

“カグヤ憑きがカグヤ以外の女性と添い遂げることができないのは、半分になった心を探し求めるように義務づけられているからよ。ふたつに分かれたものは磁石のように引きつけ合う。ひとつになるのに抵抗できる人はいないわ。カグヤ憑きさえも……”

豊姫は悲痛な面持ちで瞼を閉じた。ハラハラと涙が頬を辿っていく。