「豊姫、聞いてもいい?」
“なに?”
「あなたはどうして橘川家の人が嫌いなの?」
豊姫から一瞬にして笑顔が消える。聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと悟ったが、時を巻き戻すことはできない。
豊姫は2、3歩距離をとると、怒りで身体を震わせながら言った。
“あの人達が呪いなんかよりよっぽど質が悪いからよ!!”
当たり前と言わんばかりに憎々しげに訴える様は“カグヤ憑き”への恨みに満ち溢れていて、先ほどまでと同一人物には思えなかった。
(豊姫……?)
“橘川家の人間がこれまでカグヤ達にどんな仕打ちをしてきたか知ってる?”
私は首を小さく横に振った。
自分以外の“カグヤ”のことを誰かから聞いたことはなかった。
良く考えてみれば当たり前なのだが、橘成典の時代から数えて“カグヤ”がひとりも現れないということはない。
もしかして……わざと伏せられていたの?
“歴代のカグヤはね、呪いを盾にとられて家族や恋人の元から無理やり引き離されたの。揉め事はすべて金で解決させられたわ”
隠されていた真実が明らかにされ、心に衝撃が走る。
それはまるで……。



