今宵も、月と踊る


「うわあ……。すごい」

「三好屋の着物レンタルは種類も豊富って評判なのよ」

鈴花は私の反応に満足そうに頷くと、鏡の前までぐいぐいと腕を引き、次々と手近に置いてあった着物と帯をあてがっていった。

「私達ぐらいの年齢の未婚女性が結婚式に招かれる場合、訪問着が良いと思うのよ。色も種類も豊富だし、落ち着いた雰囲気も出るしね」

「もう、好きに見繕ってください。着物の種類とか合わせ方とか、細かいことは私には分からないし」

「もう、小夜ったら。あ、振袖もあるけど見てみる?」

私は即座にぶんぶんと首を横に振った。

「いいよ!!いくらなんでも28歳の女が振袖着てたら痛々しいでしょう?」

「そんなことないよ!!小夜は美人なんだから、もっと着飾ってみようよ!!」

浮かれた鈴花は私が止める間もなく、何枚かの振袖を持ってきた。