この身に絡みついた鎖の先端を持つのは志信くんだ。彼の気まぐれひとつで私の人生は大きく変わる。
(大丈夫。全て覚悟の上だ)
通用門の前に立って、大きく息を吸う。試合前はいつも深呼吸して前を見据えていた。
そうするとおのずと道が開けて、自分のすべきことがわかるのだ。
私が進むのはいばらの道。一度足を踏み入れたら逃げることは許されない。
志信くんの元に戻るということは、“桜木小夜”としての自分を押し殺して、一生“カグヤ”として叶わない想いを抱き続けるということに等しい。
(それでもいい……)
“カグヤ”を失って志信くんひとり、もがき苦しむよりはずっといい。
募る愛おしさにこれ以上嘘はつけないのなら、どんな形でもいいから傍に居たかった。
だから私は“カグヤ”になりきって……“カグヤ”を愛する志信くんを受け入れる。



