(気が重いなあ……)
最寄りの駅から橘川家へと向かう足取りはひたすら重かった。次から次へと意味のないため息が出てきては消えていく。
帰りたくないと思っていても、いつまでも帰らない訳にはいかなかった。
五千万の借金は返せる当てもなく、私は志信くんとの約束に未だに縛られている。
結局、数時間ほど街を彷徨った末に、自分から鳥籠の中へと戻ってくることとなった。
……いっそのこと、志信くん自ら追い出してくれればいいのに。
自虐的な考えさえ湧いてくるのはきっと、嘘をついたと責められたせいだ。
嫌われてしまえば潔く諦めて、彼の存在を心から締め出して、二度と誰かを好きになったりしないと誓いを立てられるだろうが、その願いが浅はかな夢物語だということは誰の目にも明らかだった。
(志信くんは……折角手に入れた“カグヤ”を手放さないでしょうね……)
たやすく手放すことが出来るのなら、最初から連れ去ったりしない。



