ショーウインドウの衣桁には淡い緑色の訪問着が掛けられている。
菊や牡丹、桜が描かれていて、色合いの繊細さに見惚れてしまいそうになる。
その隣には私にも馴染みのある卒業式のレンタル用の袴や、成人式用の振袖も飾られていた。
三好屋は販売だけでなく、レンタルや各種行事にも対応できるように手広く商売を行っているようだ。
「こんにちは……」
恐る恐る店内に入ると所在なく目線を泳がせる。
呉服屋の店内にいるのはもちろん、和服を着たお客さんの方が多い。洋服を着ている私の方が返って浮いてしまうくらいだ。
鈴花ったらどこにいるのだろう。先ほどから探しているのに姿が見えない。
仕方がないので手の空いている店員に、鈴花を呼び出してもらうことにした。
「小夜!!いらっしゃい!!」
ほどなくして暖簾の奥から着物姿の鈴花が飛び出してきて、一直線に私の元に走り寄ってきた。
今日の鈴花は可愛らしい薄紅色の小紋を着ており、玉飾りのついた簪で髪を纏めていた。
私とふたりで出掛ける時には洋服を着ていることが多いが、こうしてみるとなかなか似合うではないか。



