アイスをひとさじ掬って浴衣のたもとを押さえながら、おずおずと志信くんの口元に銀色のスプーンを持って行く。
スプーンからアイスを嘗めとる志信くんを見ていると、威嚇ばかりしていた野良猫を手懐けたような気分になってくる。
「甘い……」
「バニラアイスだもん。甘いに決まっているでしょう?」
当たり前の感想を聞かされると思わなくて、クスクスと笑みが漏れる。
「小夜も食べるか?」
志信くんはこちらの返事も待たずに、今度は大胆かつ強引に私の唇を貪り始める。
絡め取られた舌に残る甘さと冷たさに脳が痺れそうになった。
「冷たいわ……」
「アイスだからな」
お返しとばかりにそう言うと、志信くんはまた唇を塞いでいく。
彼は不思議なことに神への祈りを捧げた同じ唇で私への愛を紡ぐのだった。



