「終わったの?」
「ああ」
「お疲れ様。今日は早かったのね」
「そうだな」
“月天の儀”にかかる時間は日によってまちまちで、1時間とかからず終わることもあれば夜通し続くこともある。
志信くん自身も、元気な時もあれば、ぐったりと疲れきって離れに戻るなり寝てしまう場合もある。
どうやら、今日は後者のようだ。志信くんに顔に浮かんでいる疲労の色は濃い。
「アイス食べる?」
「もらう」
疲れた時は甘い物だろうと思って勧めてみると、やはり大当たりだった。
すぐさま廊下から起き上がり台所に走ろうとすると、志信くんに腕を引かれて止められた。
「これでいい」
志信くんが指さしたのは半分溶けかかっている、私の食べかけのバニラアイスだ。
「食べかけだよ?」
「食べさせてくれよ」
……こういうストレートな物言いに参っているのは私の方に違いない。



