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あれこれと忙しくしていると、2週間後の土曜日は直ぐにやって来た。
私鉄と地下鉄を乗り継いで1時間ほどで、三好屋のある町に到着する。思っていたより近い。
駅に降り立つと近くを流れる川から吹き付ける風の冷たさに身震いしてしまう。
マフラーに顔を埋めながら駅前の大きな通りを歩いて行く。
再開発が進んで小綺麗になった下町の風景は古民家とモダンな建物が妙にマッチしていて、寒さに震える私の目を大いに楽しませてくれた。
事前に鈴花に住所を聞いておいたおかげで、目的の三好屋は直ぐに見つかった。
もっとも、住所を聞かなくても直ぐに分かっただろう。
(大きい……)
老舗呉服店“三好屋”は他のお店とは一線を画していた。
木造二階建ての建物は古いながらも、どっしりとした存在感と重厚感を醸し出していて、飴色に光る店名の書かれた檜の看板の艶やかさが伝統を感じさせた。



