「年齢なんて些細な問題だろう?」
志信くんは心の中を見透かしたように小さく笑った。
「……あんたは俺の力を見ても化け物だって罵ることもしなければ、恐れをなしてひれ伏すこともしない」
「志信くん?」
志信くんの口調には怒りや嘲りが含まれていて不安になる。
誰かにそんなひどい扱いをされたことがあるの?
尋ねようとした矢先に、顔を両手で包まれる。
「あんたは俺のものだ」
苦しげに顔を歪ませる志信くんを見て、私はこれまで何度も繰り返されてきた束縛の言葉の本当の意味を知った。
志信くんにとって“カグヤ”はただの伝説ではない。
“カグヤ憑き”として生まれた彼が、信じることの出来た唯一の人間。たったひとつ残された最後の希望。
……それが“カグヤ”だ。
他人の傷を癒す一方で、彼自身は周りの心無い言葉や態度に傷つけられていた。なんて皮肉なことだろう。怒りさえ覚える。
志信くんが“カグヤ”に傾倒するのも仕方ない。
それが、いつしか強い執着と恋慕の情に変わってしまったのは自然な流れだ。
歪んでいる?
でも、私は……存在すら分からない女性にこんなにも深い愛情を注ぎ続けていた志信くんのことを。
“信じて欲しい”と請う彼のことを。
歪んでいる、という一言で済ませることができなかった。



