「俺を信じて欲しい」
志信くんが私の手を取る。真剣に訴える瞳から目が逸らせなくなる。
これほどまでに熱っぽく見つめられたことがあるだろうか。
「俺が……あの家でまともでいられたのは“カグヤ”がいたからだ。“カグヤ”なら俺のことを理解してくれるってずっと思っていた」
志信くんの指が今度は髪に伸びていく。
やわやわと愛おしげに触れてもらえるならもっと念入りにトリートメントをしておくのだったと、バカなことを考え始めてしまう。
「どんな女だろうって、ガキの頃から想像していた。どんな顔でどんな瞳でどんな髪をしているんだろうって」
伝説を繰り返し聞かされた幼き日の彼を想像すると居たたまれなくなった。
志信くんの中で“カグヤ”は大層素敵な女性に美化されている。
「ごめんね。こんな年増で。しかも可愛げもなくって」
実際に会ってみてがっかりさせたに違いない。
私には年相応の落ち着きも、年齢を重ねた故の美しさというものが感じられない。
せめてあと3歳若ければと思う。
20歳と25歳ならまだつりあいがとれたのに……。



