今宵も、月と踊る


「……ごめんね。こんな話をして」

志信くんにとってはさぞやつまらない話だったことだろう。

(私ったら何をぺらぺらと……)

自分でもお喋りが過ぎたと思う。

感情をこめずにありのまま淡々と話せたのは、志信くんが昔の私を全く知らないせいだろう。昔のことを知らなければ今の自分と比較されることもない。

今の私は都会の雑踏に紛れてしまうほど、ちっぽけな存在だ。

志信くんは黙って椅子から腰を上げて、土がつくのも構わずに私の真正面に跪いた。

「怪我をしたのはどちらの足だ?」

「左だけど……」

そう答えるなり、左足を持ち上げられチノパンの裾がめくられた。

「し、志信くん!?」

露わになった足はパンプス用のレースの靴下しか履いていない。

肌を晒した足首にそっと口づけられ、醜い手術跡が慈しむように指で撫でられた。