「怪我をして大会に出れなくなって、絶望に打ちひしがれている私にコーチが言ったの。“これも運命だと思って受け入れなさい”って」
泣き崩れる私の肩をコーチは優しく撫でてくれた。私の活躍を誰よりも期待してくれた恩師の慰めが余計に辛かった。
「……運命って都合の良い言葉よね。苦しくて、悔しくて、悲しかった思いも、運命だから仕方ないって受け入れるしかないの」
練習がきつくて倒れそうになった日も、優勝できなくて悔しさに涙した日も、運命の波に飲まれて彼方に消えていく。
私は大事な思い出を手繰り寄せるように、死にもの狂いでリハビリに励んだが、残念なことに結果は振るわなかった。
アキレス腱断裂という大怪我は私の選手生命を大きく縮めてしまった。
「陸上を辞めると決意してすぐの頃は苦労したわ。走るのにかまけて勉強なんて全然やってこなかったから、いくつも単位を落としそうになっちゃったし」
スポーツ推薦枠での入学のおかげで、教授たちの私に対する採点は甘かった。それも、怪我をするまでの話だ。
「無事に卒業できたのはひとえに友人たちのおかげね」
皆が腫物を扱うかのようによそよそしくなる中で、鈴花は変わらない態度で接してくれた。
その上単位や実習の面倒まで見てくれて、感謝してもしきれないくらいだ。



