「どうしてこんなことするの?」
志信くんに物を強請ったことはこれまで一度もない。
離れに住んでいるといってもそれは壺を弁償することと引き換えに出された条件であって、まるで愛人のように物をもらう理由などないからだ。
「……そんなに“カグヤ”が大事なの?」
自分で言っていて、虚しくなってくる。“カグヤ憑き”にとって“カグヤ”が大事なのはわかる。けれど、ここまで私の意思を無視されると悲しい気持ちになる。
確かに私は“カグヤ”かもしれない。
でも、“桜木小夜”一個人としての意見も尊重して欲しかった。
「私は何も欲しくない」
欲しいものがあるとすれば“カグヤ憑き”から……志信くんから解放されることだろう。
……私が“カグヤ”でいる内はそんな日は永久に訪れそうにないけれど。
気まずくなって志信くんから目を逸らす。



