今宵も、月と踊る


(うう……。でも、仕方ないよね)

映画やドラマのように、良い男がその辺に転がっているはずがないのだから。

諦めにも似た気持ちを抱えながら自室のポストを開ける。

ビラやクレジットカードの明細に混じって、キラキラと輝く“Invitation”の赤い文字が閃いて、思わず目を留めた。

慌てて銀色の封筒の裏を返せば、“三好俊明・本田鈴花”の名前が書かれていた。

(もしかして……!!)

階段を上りながら喜び勇んで封を切る。予想通り結婚式の招待状と式場の案内状が入っていた。

玄関の鍵を開けながら、急いで鈴花に電話を掛ける。

呼び出し音の後に続いて耳に届くのは、ほわっと柔らかい鈴花の声だった。