「へえ……。じゃあ、その深い事情とやらを聞かせてもらえる?彼氏が出来たらいの一番に教えあうっていう約束はまだ有効よね?」
鈴花はそう言って、片眉を吊り上げた。青春時代を共に過ごした女同士の結束は固い。
忘れていた訳じゃないけれど後ろめたくなってくる。
私はため息をつきながら鈴花に告げた。
「……彼氏じゃないよ」
「どういうこと?」
“カグヤ”やら“カグヤ憑き”やら、私にだって分からないことの方が多いのに、どうやって鈴花に説明したらいいのだろう。人智を超えた不思議な世界が存在することをどう証明するべきか。
胸に咲いた橘を見せたら手っ取り早い?
私にはただの痣にしか見えないけれど、志信くんがこの痣にこだわっていることは伝えられそうだ。
(でも……)
「……ごめん。今日のことは今度ゆっくり話そう」
“カグヤ”と“カグヤ憑き”のことを不用意に他人に話すのは躊躇われた。
志信くんの為にも、自分の為にもここは黙っておくのが賢明だろう。
考えあぐねた挙句の結論を伝えると事情を察したのか、鈴花に肩をポンッと叩かれた。
「分かった。今日は解放してあげる。でも絶対、そのうち話を聞かせてもらうんだからね」
……次に鈴花と会う時までに志信くんと口裏を合わせておく必要がありそうだ。



