快適だったドライブの雲行きが怪しくなったのは、駅前の交差点を左に曲がったあたりからだ。
(まさか……違うよね?)
一抹の不安がよぎって、胸が奥がさわさわとざわめきだす。
どうか当たりませんようにという必死の祈りは神様には通じなかった。
「着いたぞ」
コインパーキングに車が停まるやいなや、私はどうしたものかと頭を抱えてしまった。
……三好屋に来るなんて聞いてない。
汚れひとつないフロントガラスから見えるのは、間違いなく三好屋の飴色の看板だった。
まずい。これは本格的にまずい。
だって、私は鈴花に志信くんの家に住んでいることを一言も話していない。
「行くぞ」
助手席から一向に出てこようとしない私を見かねて、一足先に車を降りた志信くんがドアを開けてくれた。
背後に光る太陽が眩しくて手をかざすと、すかさず絡めとられて腕を引っ張られて外へと連れ出される。



