(行きたいところ、か……)
行きたいところなら沢山あった。
デパートで新しい服も見たかったし、本屋に行って新刊を探したいし、コンビニで新しいお菓子を発見するのも捨てがたい。
けれど、志信くんとふたりで行くとなると、どこも相応しくないような気がする。
“月天の儀”から私の頭の中は“カグヤ憑き”――志信くんのことで一杯だった。
どうやって力を使うのか、とか。どこで舞は覚えたのか、とか。
……いつから“カグヤ”を探していたのか、とか。
ありきたりな疑問が頭の中に浮かんでは消えていく。
私は今更だが不思議な力を持つ彼のことを、もっと知っておくべきだと思っていた。



