今宵も、月と踊る


「大丈夫だったか?」

“月天の儀”が滞りなく終わり少年と3人の立会人が退出すると、志信くんが衝立に隠れていた私に声を掛けた。

「手を貸してもらえる……?」

私は震える手で志信くんの袴を掴んだ。何かに縋っていないとどうにかなってしまいそう。

「腰が抜けちゃったみたいで立てないの」

……不甲斐ない自分が本当に情けない。

「やっぱり“カグヤ”のあんたにも見えるのか……」

志信くんはポツリと呟くと私を抱き上げて、そのままスタスタと歩き出した。

所謂お姫様抱っこというやつだが、もはや抵抗する気力も起きない。

志信くんの腕の中でふわふわと揺られているのは心地が良かった。このままずっとこうしていたい。

(志信くんにも見えているのね……)

またしても、“カグヤ”と“カグヤ憑き”の結びつきの強さを思い知らされる。