志信くんは傍らに置いてあった榊と鈴を手にすると、少年の前で舞い始めた。
月岩神社で見た時と異なり今日は楽人がいないので、衣擦れの音と鈴の音がはっきりと聞こえる。
志信くんの舞を見たら、また倒れてしまうのではないかと危ぶんでいたが、それは杞憂に終わった。私の目は志信くんの姿をはっきりと捉え続けている。
ひたむきに舞を捧げる様子はただ、ただ美しかった。
志信くんが一歩踏み出すだけで涙が出そうになり、鈴が鳴る度に胸が締め付けられた。
(……許しを請いているようだわ)
志信くんは自分勝手で愚かな人間の代わりに、月に祈っているのだ。
“どうか見捨てないで助けてほしい”と、身体を天に差し出して懸命に許しを請いているように見えた。
……もしかしたら、知らない方が幸せだったのかもしれない。
あの美しさが罪の懺悔と引き換えに生まれているのなら、なんて悲しいのだろう。



