天使の頬に優しいキスを


「…泉、」


体育館から出ようとした時に


姉に呼び止められた。


「お姉ちゃん」


私の1学年上のお姉ちゃんがここにいると思うと、

なんだかとても安心した。


「もぉ、あんた校章なくしたんだって?

なにしてんのよ」


「なんで知ってるの?」


「…あんたさ、私生徒会の書記担当なんだけど」


姉のその言葉で、全てが分かった。


「……お、七瀬その子だれ?」


男の先輩がネクタイを緩めながら

私達に近づいてきた。

「私の妹です」


姉に言われて、挨拶をした。


「七瀬に似てねぇな(笑)

俺、柴田豪(ゴウ)っす!

七瀬と同じ書記っす!

柴先輩って呼んでな!」

柴先輩は、とても明るくて

とても真面目そうには見えなかった。


「へー噂の妹ちゃんね」

そう言って現れたメガネ男子。

「僕、青山修人(ハヤト)

しゅーちゃん、って呼ばれるけど

はやと、だからね。よろしく

三年会計担当です」



「…おめぇら、なにサボってるんだよ」


姉と先輩2人の後ろから現れたのは


「あ、誠先輩」


姉が言った。


「まこちゃん先輩、この子七瀬の妹だって

可愛くないっすか?」

柴先輩に肩を抱かれた。


「ちょっと、私の妹になにすんのよ」


姉にすぐに離されて


この生徒会の人達の距離感が全く分からない。


「知ってるよ。

さっき会ったし。な?」


な?と私に同意を求めてきてくれたのが


嬉しくて、大きく頷いた。


「ってか、お前たちも早く仕事しろよ」


「はーい。じゃあね、妹ちゃーん」


「待ってるから」


「じゃあね、泉あとでね!」


姉たちは体育館を去った。


「よし。あいつら全然仕事しねぇんだよな」


先輩はそう言いながらも笑っていて、

あんなふうに仲がいいのって、羨ましいな

と思った。


「あ、ごめんね。そろそろ行かなきゃまずいよね」


「…はい」


先輩ともっと話してみたかったのに

ちょっと残念。


「一緒に行こっか」


先輩は歩きだした。


一緒に行こっか、その言葉に胸がドキドキしながら


先輩の少し後ろを歩いてついて行った。