その後、あたしはリクコさんの家…つまりコッピの家にカイさんと一緒にお邪魔した。

とは言っても、強制的に連れてこられた。


「……」

『…落ち着いた…?なんか飲みもん持ってくるから。カイ、頼むよ』

『はい。ご安心下さい』


ガチャン、とドアが閉まる。

カーテンの向こうはもう明るくて。
いつの間に日が差したんだろう。


「…ねえカイさん」

『…何ですか?』

「……もう、コッピに会えないの…?」

『……それは…』

「…綾斗は勝手すぎるよ…これでもあたし…コッピの…彼女なんだよ…」


すぐに涙が溢れる。
どこにぶつけていいかもわからない、やりきれない切ない気持ちが込み上げる。


『…飲みもん、ここ置いとくよ』

リクコさんがあたしの傍に、飲みきりサイズと書かれたコーラを置く。

いつの日かコッピと自販機で買ったコーラ。

ただのコーラのはずなのに。
コッピと飲むと、特別な飲み物に思えた自分が今となっては虚しくて。


赤いコーラのパッケージが歪む。

「……こんな捨てられ方…ないじゃんかぁ……」


コッピに会いたくて会いたくてたまらなかった。

一緒に歩いた海道。
お揃いの香水。指環。
コッピの初めてのプレゼント。


リクコさんの部屋の隅には、あの煙草が置いてあって。


『…孝二郎、笑ってたよ。"セブンスターのお陰"って』


どうしてコッピは、簡単に思い出を無かったことに出来るんだろう。