ふと見たコッピの顔は、悪戯に意地悪に、笑ってた。
まるで、小悪魔の様な微笑み。

そしてまた、ぎゅっと抱きしめられる


『俺が生きてること、教えてくれてありがと』

そして、コッピは『ごめんな』と言って、綾斗と何人かと一緒に、外へと向かう。


残されたのは、あたしとリクコさんとカイさん。

白いセーターが血に染まって、コッピの存在を意味してた。


『……ごめん』

リクコさんはそっと、あたしの目に手を寄せる。

『…カイも私も見ないから。……泣きな』


途端、涙が溢れて。
暖かい手が、あたしの頭に乗る。

『…すみません。貴女のいる前で、殴ってしまって。辛かったでしょう』

また、優しいカイさん。
二人が傍にいることを知って、安心感に包まれる。


初めて、付き合って。
初めて、振られて。
初めて、失恋した。


こんな失恋の仕方なんて…あるの?

人を殺してた。
お前もいつか殺すかも知れない。
だからサヨナラ…?


意味わかんないよ…

意味わかんないよコッピ…


あたしには、君を忘れることなんて出来ないよ…

あんなに優しい笑顔を見せられて

あんなに暖かい手で抱きしめて

あんなにあたしを虜にしたのに


こんな捨て方…アリなの…?




その時まだ、あたしは知らなかった。

あの時、コッピは笑ってたんじゃなくて、泣いてたのを。

あたしは知らなかった。