(それじゃあ、まずはお互いの自己紹介をしましょうか。)
情けないことに俺は、反射的にギクリとしてしまった。たしかに考えてみれば、お互いまともな会話をしていないので、当然の流れである。
(そうですね。どちらからやります?)
(では、私から。私の名前は神崎 凪。歳は貴方と同じ。先生も話してた通り、声を出すことができません。でも、身体に不自由はないし、不自由だって思うのは…初めの自己紹介くらいかな。)
と、彼女は笑顔で自己紹介を終えた。俺も思わぬオチに笑いをかくせない。

(それじゃあ、次は俺ですね。)
彼女のお陰か自分にしては自然な流れで会話を続けられた。
(俺の名前は五十嵐 祐。特に取り柄もない一般生徒だ。唯一他と違うのは、この超能力が使えることくらいかな。)
簡単にはなってしまったが、緊張して震えたり噛んだりすることもなかった。
神崎は小さく拍手をしたあと、少し冷めた紅茶を飲んだ。そして、緩んだ表情から緊張感のある表情に変わる。
ここからが本題であることを悟った。