神崎宅にお邪魔した俺はリビングに通された。シンプルな白を基調としたリビングは清潔感があった。
(飲み物を持ってくるのでそこに座っていてください)
と言われ、彼女が指示したダイニングチェアに腰を掛ける。戻ってきた彼女は俺に温かい紅茶をくれた。種類には詳しくないのでわからないが、うっすら甘いにおいが俺の鼻孔をくすぐった。少し啜るようにして飲むと、程よい甘さと苦味が広がり、少し肩の力が抜けた気がした。
(落ち着きましたか?)
向かい合って座る神崎が尋ねる。俺は相づちで答えた。
(それは良かったです。五十嵐さん、見るからに緊張しているようにみえたので。)
と彼女は微笑みながら言う。俺も照れ隠しにハハハと笑った。
(さて、本題に入りましょうか。ここからは練習もかねて五十嵐さんもテレパシーで話してください)
「あー、はい。わかりま…」
神崎が微かにジト目になったのを見て察する。
(わかりました。)
彼女はにこりと微笑んだ。
(女の子って怖いなぁ。)
(なにか言いました?)
(ごめんなさい。なんでもありません。)