「返して!」
「……そんなにわかんないなら、わからせてあげるわよ」
「もうみんな来るころだしねー」
来なさいよと言う女子について行けば、そこは体育館裏だった。
こんなところで一体なにを……
「さてっと……」
そう呟いた女子の手があたしの頬を打つ。
「っ!」
痛い……
口、切れたかな……
血の味がするよ……。
「本当に、目障り!」
そう言い、また女子の手が上がる。
なんで?
あたしはただ、拓人君の悲しい顔を見たくないだけなのに……
あたしは、殴られるであろう痛みに備えて、目をギュッと瞑った。
でも、いつまでたっても痛みはこない。

