初恋の始まりは病院で。

「どうしたのっ!!!拓也くん!!!」




僕がナースコールを押したからか、





中村せんせいは慌てて来た。




「あっ、中村せんせー、おはようございますっ。あのね、カナちゃんが起きてくれないんだよ」





僕に、何ともないのが分かったのか





ホッとした表情を見せた中村せんせい





「あら?何でカナちゃんが、拓也くんのお部屋にいるの?」






僕はフフッと笑い昨日の事を話した。





「そうなのね~…。可愛いわねっ!でも起こしてあげなきゃ松村先生が心配するわよ!!!」




そう言って、中村せんせいは


カナちゃんを抱っこしようとした。





「中村せんせい、待って」






それを僕は止めた。






「んっ?」





「カナちゃん、僕の手ギュッて握ってるんだ…」





そう──




カナちゃんを何とかして





起こそうとしたけど、





カナちゃんが僕の手を握ってるから




どうも出来なかったんだ。





それを見た中村せんせいは



「あら…きっとカナちゃんは拓也くんのことが好きなのよ」






その何気ない一言に




僕の顔は真っ赤っかになった。






「カナちゃんが僕のことを好き………なの?」









ボソりと呟いたのに、








中村せんせいは目を細めた。






「あら、分かんないわよ?さて、早く起こさなきゃ!!!」






そう言ってカナちゃんと僕の手を





優しくほどいた中村せんせい。





あっ……………。





赤い糸が切れたように






繋いでいた手と手がほどかれた。




「拓也くんは、お熱測ってて?先生は、松村先生のところにカナちゃんをお届けしてくるから」






中村せんせいは笑い、





病室から出ていった。