初恋の始まりは病院で。

今日はお母さんは来なかった。


寂しくなんかないんだ。




寂しくなんかないんだ。



寂しくなんか…………………




「ふぇっ…おかぁっさん…。おかーざーんっ!!!」



僕には1人というのが無理らしい。




常に誰かに居てもらわないと





ダメな人間なんだ。




「おかっ…おがぁざんっ…あいひっくあいだい~」



僕は泣いた。



ただお母さんに今日あった話を



聞いてほしかった。





僕の名前を呼んでほしかった。




優しい笑顔でまたねって言われたかった




ただそれだけの事なのに。




「たっくん…?泣いてるの?」




ドアから顔を覗かせたのは




さっきまで僕の病室にいた



カナちゃん。



「ううんっ…泣いてなんか、ないよ!!!」




涙を拭いて笑ったのに、





「たっくんの嘘つき。」





そう、言われてしまった。




カナちゃんにそう言われると、




「ごめん」




そう謝る事しか出来なかった。




カナちゃんはそんな僕を見て



無邪気な笑顔で笑った。





カナちゃんのその笑顔を見たら




寂しさなんか吹っ飛んだんだ。