俺、共犯者と秘密共有中。

「おはようございます。」


 数日後いつものように出勤して更衣室へ向かおうとしていると、バイト先の女の先輩が、俺を呼び止めた。


「あ、純平。来週の美咲の送別会どうする?」


 送別会……?


 今、この状況で初めて聞いた単語に、俺は動揺を隠せなくなった。


「え、……美咲ちゃんやめるんですか。」


 やけに焦った様子の俺に、先輩はきょとんとした。


「あれ、……聞いてなかったの?」

「……ハイ。」

「ありゃ、……あたし言っちゃってよかったのかな。」


 先輩はしまった、と言った顔をして口元を押さえたが、すぐにころりと表情を変えて笑った。


「まあいっか。純平だし。なんで伝わってなかったのかは謎だけど、……とりあえず、来週だから。」

「……わかりました。」


 送別会……。


 感情を抑えつつも軽く頷いて、更衣室の戸を閉めると、扉の向こうから、バカッ、という声が聞こえた。


 そこに俺に送別会のことが伝わっていなかった理由が隠されている気がして、タチが悪いなと思いつつも耳を澄ませると、さっきの人とは別の女の先輩の声がした。


「純平呼んじゃダメだったんだって!美咲から聞いたけど、あの2人さ、うまくいってないっぽいんだから。」

「え、……そうなの?どうしようあたし知らなかった……。」

「……美咲さあ、モテるのにずっと彼氏も作らずに一途だったから、……飲み会の日、本当に嬉しかったのになあ。……何があったかは、詳しくは話してくれなかったんだけどね。」


 そういえばここの人たちは、美咲ちゃんが聖也と付き合っていたことを知らない。


 そこで、雑談をする2人に店長の軽い叱責が入って、話はそこで途切れた。


 ……ここは、俺にとって大切な場所だった。


 美咲ちゃんと初めて出会った、大切な……。


 このまま見送れば、なにもかも全部終わってしまう気がして、俺は焦燥感に駆られた。