俺、共犯者と秘密共有中。

「……それじゃあ。」


 すっかり身支度を整えた美咲ちゃんが、ピンク色のパンプスを履いて、振り返った。


 その表情は、やけに落ち着いていたが、彼女はいつも笑顔だったため、少し不自然にも思えた。


 とうとう来てしまった。


 その終わりを受け入れられずにいる俺は、何か話題はないかと思考を巡らせる。


 ドアノブに手をかけた美咲ちゃんに、俺は思わず手を伸ばしかけた。


「あ、……1週間、ありがとう。」


 首だけ振り返った彼女は、相変わらずの無表情だ。


「うん……。」

「あの、……その。」


 頭を掻き毟りながら、無意味な言葉を並べ続ける俺の未練がましい考えは、見え見えだったのだろう。


 ついに、痺れを切らした彼女が深いため息をついた。


「……純平くん。」


 聞いたことのない低い声に、背筋が凍りつく。


 彼女はドアノブから手を離し、こちらに向き直った。


「……わたし本当は、この1週間、苦しかった。先週了承しちゃったことも、後悔してた。」

「……」

「……中途半端なことして、ごめんなさい。……だけど、約束通り、これでもうおしまいにしてほしい。」


 翳る表情で斜め下を見つめたまま言った彼女に、俺は何も返すことができなかった。


 ……そして、出て行く彼女の背中を見つめることしか出来ずに、扉が閉まっても、身じろぎもせずにただ立ち竦んでいた。