俺、共犯者と秘密共有中。

 再び、背中合わせ。


 眠れない俺は、部屋の中の一点を見つめていた。


 時計の秒針の音ばかりが耳について、寝よう寝ようと考えれば考えるほど、目は冴える。


 明日の講義はサボってやろうと考え始めたころ、後ろで美咲ちゃんが口を開いた。


「……起きてる?」


 なんとなく、高校生の頃の修学旅行を思い出す。


「……うん。」


 少し間を空けて返事をすると、また沈黙が流れた。


「……明日、わたし、聖也と仲直りするよ。」

「……うん。」

「……喧嘩、とかではなかったんだけど正直少しすれ違ってる部分はあって。」


 それ以上聞いていると泣きそうになった俺は、慌てて話を遮った。


「1週間、……ごめん。」


 後ろで、鼻をすする音が聞こえる。


 静寂な部屋には、それがよく響いた。


「俺、……頑張って、美咲ちゃんよりも好きになれる人、見つけるよ。」

「うん。」


 嘘だ。


「そしたらさ、……いちばんに、美咲ちゃんに紹介する。」

「うん……。」


 きっと出来ない。


 嘘を重ねながら、俺は自分の隣に美咲ちゃん以外の女の子がいる図を思い浮かべた。


 今はそれが、遠い遠い未来のこと、……もしかしたら、届かないところにあるんじゃないかと思うほどに、霞んでいる。


 美咲ちゃんの声は涙声に代わり、やがて嗚咽が聞こえ始めた。


 それほどに、……俺は彼女を、苦しめていたのだろうか。


「……ほんとに、ごめん。」

「ううん……。」


 泣いている理由は、俺には怖くて聞けなかった。


 涙の理由が、どっちだったとしても、……俺には何も、出来ないから。