俺、共犯者と秘密共有中。

「……じゃあわたし、帰るね。」


 美咲ちゃんが手で軽く涙を拭って、不自然に笑顔を浮かべた。


 そのまま彼女は立ち上がって、簡単に、俺たちの繋いでいた手は離れる。


「あ、……借りてたDVD、わたしが返しとくよ。ポストに入れるだけでしょ。」

「……」


 俯いて何も言わない俺に、美咲ちゃんが歩み寄ってきた。


 ……正確には、何も言えなかった。


 口を開けば、堪えていた涙がまた出てきそうだったし、なにより、まだ終わりたくないなどと、自分勝手な気持ちばかりが溢れ出しそうだった。


「純平くん……。」


 自分の前に影が出来て、顔を上げれば、今にも泣き出してしまいそうな笑顔が俺を迎えた。


 ……俺の目は、都合がいいのだろうか。


「最後に、なにか、……ある?」

「……」


 最後って、こんなにあっけないのかな。


 このまま彼女の背中を見送れば、全ておしまい。


 明日からは、……ただの先輩後輩、なんて、前以下の関係になるのかな。


 口を開かない俺に痺れを切らしたのか、美咲ちゃんは背中を向けて、部屋の扉の方へ行ってしまう。


 俺は、……。



 ……言葉は防げても、自分の無意識な行動までは防げなかった。


 美咲ちゃんが開こうとしたドアを押さえて、後ろからその細い手首を掴む。


「……帰んないで。」

「……」


 何にも言わない彼女に、俺はもう一度繰り返した。


「帰んないでよ。」