俺、共犯者と秘密共有中。

「じゃん!唯一の得意料理作るね。」


 その日の放課後、インターホンの音に、ドアを開けると、胸の前でスーパーの袋を掲げて美咲ちゃんが立っていた。


「得意料理?」

「うん、定番だけど。」

「なに?」

「ナイショ!」


 美咲ちゃんのいたずらっぽい笑みに、俺は何も言えなくなった。


 相変わらず、うちの家には誰もいない。


 中に促すと、美咲ちゃんはおもむろにバッグを漁り、真っ白なエプロンを身につけた。


 そして綺麗な長い髪もひとつにまとめると、スーパーの袋からジャガイモを取り出す。


「キッチン借りるね。」


 リビングのソファに腰掛けると、そこからキッチンも目に入る。


 トントン、とリズムよく聞こえる包丁がまな板にぶつかる音に、懐かしさを覚えた。


「キッチン綺麗だね?」


 閑散とした空気が気になったのか、美咲ちゃんが口を開く。


「あー、あんまり使ってないから。」

「そうなの?ご両親は?」

「共働きだから、あんまり家にいないよ。」

「そっか。いつも何食べてるの?」

「そのへんに売ってるもの?」

「えー、だめだよそんなの。」


 俺は一瞬、言おうとしたことを躊躇い、唇を結ぶ。


 そして一呼吸おいて、もう一度口を破った。


「美咲ちゃんが毎日作ってくれるなら、なんでも食べるよ。」


 彼女から、欲しい答えが返ってくることなんて絶対にないことは、わかっているはずなのに。


「もう、……何言ってんの。」


 美咲ちゃんは手元を見ていて俯いていたので、その時の表情は伺えなかった。