俺、共犯者と秘密共有中。

「だってちゃんと、顔見ないと、……わかんないと思ったし、メールとか電話だと、無視されちゃったら嫌だったから。」

「……」


 俺は、初めて見た美咲ちゃんの悲しげな表情に胸が痛くなったが、心の何処かでは喜んでいる自分が居た。


 俺の行動で、いつも笑顔の美咲ちゃんに、こんな表情をさせられるんだって。


 ……でもやっぱり、美咲ちゃんは笑顔がよく似合う。


 逃げたって、こうなるんなら仕方ない。


 多分もう、全部、受け入れるしかないんだ。


 何も言わない俺に美咲ちゃんは続けた。


「最近ずっと、わたしの事、避けてる、よね?勘違いだったら、恥ずかしいし、申し訳ないんだけど……。

 なんだか最近、純平くんとあんまり喋ってないなー、と思って……。」


 俺は、少し引きつった笑みを浮かべた。


 多少引きつっているくらいなら、この暗闇がカバーしてくれそうだ。


「気のせいだよ。……俺が美咲ちゃん避ける理由、ないし。

 ……大学入ってから勉強ついてけなかったら嫌で、最近ずっと勉強してて寝不足で機嫌悪かったから、人に当たったらいけないなーと思って、それで……。」


 表情は必死で作っていたけれど、口調はやたら早口だったし、左手は震えるくらいに力を込めて、ジーンズを握っていた。


 美咲ちゃんは、俺の言葉に少しばかりホッとしたのか、不安げな表情を和らげた。


「そうなんだ……。よかった、わたし、純平くんには絶対嫌われたくないもん。」


 美咲ちゃんの笑顔に、俺も少しホッとして軽く息を吐いた。


 嫌われたくない、か……。


 むしろどうか、嫌いになれる方法を、誰か教えて欲しい。


 そんな心の声を胸の奥にしまって、この時俺はもう、美咲ちゃんを諦めることを、諦めてしまった。