俺、共犯者と秘密共有中。

 途中、美咲ちゃんがお手洗いに席を立った。


 少し緊張が解けて、大きく息を吐く。


 ジュースを飲もうとコップに手を伸ばしたが、中身はすでに空っぽだった。


 そして注文しようと呼び出しボタンを押そうとしたところで、聖也が突然口を開いた。


「あのさ〜……。」


 目も合わせず、少し言いづらそうな様子に、嫌な予感がする。


「ん?なに?……聖也もなんか頼む?」


 話を逸らそうと適当にふってみたが、聖也は首を横に振る。


「……あのさ、俺さ。」


 聖也のこの感じ、前にも一度あったから知っている。


 どうにか話を別の方向に持っていくことは出来ないかと思考を巡らせるが、何もない。


 俺は耳を塞ぎたい衝動に駆られた。


 聖也はどんなときだって、感情が表立っていて、良くも悪くも、わかりやすい。


 ……そうだ、あの時聖也は、


「なんか、美咲さんの事、……好きになっちゃったかも……。」


 ……好きな人が出来たって、……そう言っていた。


「……そう。」


 俺はなんでもない顔をしながら、動揺は隠せなかったのか、中身がないことを忘れて空っぽのコップを持ち上げ、再びテーブルに置いた。


 振動により、カラン、と溶けた氷がコップの中で動いた。


 聖也は俺の反応の薄さが気になったのかじっとこっちを見つめていたが、俺は今の感情が透けてしまいそうで、聖也の方が見れなかった。