「えっ、ちょ……っ佳澄……?!」
「ねぇわぁ……せめても少し可愛いやつ……」
「お前はホモ呼ばわりOKな人種かよ!」
私からのドン引きがよほど珍しく効いたのか、綿貫は焦ったように声を上げたが白井が動じた様子はない。
……まあ、彼ですからねぇ。
「うっわ!オトコ同士で何やってんの。キモ……」
うっわぁ、と大袈裟に眉を顰めたのは。
少し茶に近い黒の髪をほっそりとした首に付く程度に切りそろえ、大きめの茶色の瞳は少し幼さを垣間見せる、
「氷見さん」
言わないで上げて、と言うように微笑むと少し拗ねたように頬を膨らませた。
「だいいち佳澄さんは甘すぎよ、そいつに」
そんなやつもっと辛く当たっていいのに!と心底不機嫌に言った。
「あ?!そんなやつってなんだよ!馬鹿女!」
いつもは優しく爽やかなイメージの強い綿貫だが氷見さんにはだいぶはっちゃけた様子を見せる。
……気の置けない仲、というものなのだろう。私にはない概念だ。
羨ましい、とか。思うけれど。口に出せない。
確かに悪口ばかりだけれど本音を言い合えて、喧嘩して、いつの間にか仲直りできる。
仲が良いのは、明白で。
それに。
氷見さんも綿貫も。好きだって。
両片思い、って。
知ってる、から。応援、しなきゃ。
あなたの幸せが私には嬉しい、から。
