この人、なんで知って――?!
誰にも言ってないのに。なんで。……いや、ここで動揺するのはだめだ。白井に確信されたくはない。
一番、ばれたらヤバイひとだ。
「……」
氷見 凛花さん。
白井が指し示した人。
そして、私の想い人でもある。
普段は少し性格がきつい、と言われがちなのだが、花がほころぶような彼女の笑い方を見ているうちに、いつの間にか。
一応、好きになったきっかけというものは存在する。
その時に、繊細なひとなんだ、と本当に優しいひとなんだ、と。
そう気付いた。
「どうした?佳澄」
「……いいえ。氷見さんが如何なさいましたか」
にこり。
微笑むと、少しばかり品定めでもするかのようにじとりと私を見て、また楽しそうにくつくつと笑った。
「ねー、口以外で会話して楽しいわけ〜?」
「ちゃんと話してるだろ。心なんて読めないんだから」
「心じゃなくて。腹の探り合いしないでよ昼間っからテンション下がるー」
そんな会話を聞き流しながらひたすら傍観に徹する。なんとか私から話題も逸れましたしわざわざ掘り返されにいくほど馬鹿じゃないし律儀でもない。
「お、またなんか楽しそうなことやってんなー!」
人好きのする笑みを浮かべながら近づいてきたのは綿貫 悠一。
彼女の幼馴染だという、スポーツ好きのクラスメートだ。
なかなかに話す機会が多い。
「当事者になると大変さがわかりますよ」
「マジ?佳澄がそこまでいうんなら勘弁だわ!」
彼はははっ、と屈託笑った。
