「辻さん!」



辻 佳澄。
それが私の名前。私なんて一人称を使っているが普通の男子高校生だ。女みたいな名前だとは自分でも思ってる。

育ちは、多分、そこそこに良い方だけど。それと私、という一人称は全く関係ない。母が使っていたからに使っているにすぎない。




「如何なさいましたか」

ふっと、頬を緩めて尋ねてきた女の子に問うと初心にも顔を真っ赤にした。赤くなった顔を隠したいのか少し俯き気味に口をパクパクと開閉させるも声にはなっていない。
ぎゅっと目を閉じた彼女に、そろそろいじめるのもやめようかな、と柔らかい表情を作って。

「ご飯、でしたら申し訳ございませんが、先約があるので」
「へ?!あ、そう……なんだっ、ごめん、あの……また今度誘ってもいいかな」

「――……」
にこり、と曖昧な笑みを浮かべる。と他クラス――……確か1組、の女の子はぺこり、と勢いよく頭を下げて自分の教室の方に戻っていった。


……嘘は、ついてないし。一応。