「あ、居た。」 しん、とした空き教室に響く声。顔をあげれば隣の席の大井くんがそこに居た。 座っていたせいか気づかなかった。 スラリとした高身長、手足が長い。袖から覗く手の指の長さに投手だ、と認識した。 この人は、徹に受けてもらえるんだ。 野球部の投手。同じ学年。きっとバッテリーを組むに決まっている。 昔は、自分がその場所に立っていられたのに。 「ねぇ」 グッと泣きそうになるのを必死に抑えた。 「君、あの人と知り合いなの?」