幼いコイゴコロ






人のいない空き教室に入り込む。
鍵を閉め、スタスタと奥へと入り掴まれていた腕はすんなりと解放された。

じんじんと後から痛みが増す。



「…徹、」


痛いじゃん、と悪態を言い放とうとした。
けれどもキッとした鋭い目線で思わず息を呑む。




「…俺、言ったよな。」

低い声、ドスの聞いた声。身が縮こまるほどその声は聞いたことがないほど恐ろしい。



「なんなのお前。何で来んの。」

「…徹、か野球がしたいからっ!」

「──女は無理だって言ってんだろ!!!!!!!」


その怒鳴り声に、張り上げた声に、縮こまった身体。泣きたくないのに、視界がぼやける。

女の姿を見せたくないのに────



「…がっかりだわ、」

「っ、…徹!」

「お前とは野球なんてやらない。一生。」



───なんで、そんなこと言うの。


「や、やだよ!!」


スッ、と横切る徹の表情は酷く冷たい。恐ろしいほど無表情で、私を視界にいれないで、スタスタと教室から出ていった。