「ちょっと来い。」
「え?…あ、」
さらに強く腕を掴まれ、強引に引っ張られる。
周囲には人だかり。皆、こちらを不思議そうにけれども楽しそうにみている。
隣にいた大山も、無表情でこちらをじっとみていた。
あれ、でも今なんの時間だった?
もう授業終わり?先生いなかったし?あれ?
…寝てたからか、な。涎大丈夫かな…。
「うっわ、なにあの子」
「やばくない?」
「すっごいね、」
廊下に出てから周囲に集る生徒はヒソヒソとこちらを指差し何か言っている。けれどもきちんとそれは聞き取ることができない。
悪口かもしれない…どうしよう。
徹がものすごい性格悪いってばれちゃう!!
顔はイケメンだけど!!性格は最悪ってばれちゃう!!
質の良い髪質が目の前でふさふさと揺れる動く。何故だか酷く懐かしい。
あの日から、ずっと口を聞いてくれなかった。目なんて合わない、帰りもバラバラ、家にもいない。徹底的に避けられた。
勝手に高校を推薦で決め、勝手に女子野球がある高校のパンフが届く。
意地悪なのか優しいのか、ほんとうに昔からよくわからない。
腕を掴まれている手がひそかに熱を帯びている。


