仲良しな三人、月那と一佳と桃は幼少の頃からずっと、一緒に風呂に入っていた。
魔冬家の風呂場は一般家庭のものよりも広い。
小さい子供三人で入ってもまだまだ余裕がある。
けれど今はそんな広いスペースが憎らしい。
そう月那は思う。
「駿くんにバレた時はどうなるかと思ったけど、二週間のトイレ掃除だけとか、軽い罰で良かった~」
楽しそうに言いながら月那の頭をお湯の中に突っ込む。
「あれ?月那、まだ十秒たってないよ?もぐってなきゃダメじゃん」
「ゲホッ!!…もっ…むっ――」
湯船から顔を出した月那を再び押し込んで頭を押さえつける。
「はーい。数え直しー。しっかり十秒つかろうね。いーち。にー。さーん。しー。さーん。にー。さーん。しー」
なかなか十に辿り着かない。
先程からこんなやり取りが繰り返されており、月那は出られずにいた。
(くるっ、しい…!)
一佳が飽きるまで終わらない。
部屋にいる時は駿が睨みをきかせているため、風呂場でしか月那に嫌がらせができないのだ。
そうすぐに一佳が解放してくれるわけがなかった。
今日も死ぬんじゃないかと思うギリギリまで苦痛は続いた。



