あれは確か遠い夏の日。
親友の愛が私の隣でずっと携帯をいじっていた。
「ねー、七海?」
愛は足をぶっきらぼうにぶらぶらさせながら沈黙を破る
「これきもくね?」
愛が差し出した携帯の画面には1人の男子が写っていた。
変な前髪に幼い顔で無邪気な笑顔。
かっこいいとはお世辞でも言えないような顔だった。
服も全然オシャレじゃなくて
モテない男子の象徴だった。
「誰これ」
「男子校の友達ー
名前は知らない」
愛の男友達の多さは凄い。
女子校に通って2年が経つが
女子校で愛みたいな男友達がこんなにいる子はなかなかいない
そんな愛を私は気に入って
お互い気があったため
いつの間にか2人でいる時間が多くなった
「名前、秋山はるかだって」
秋山はるか
男なのに”はるか”めちゃくちゃ変な名前だなぁと思った
「変なの…」
顔が良くない男子に興味はなかったし
頭のいい進学校の男子校なのは分かったが
その学校の男子は何かと面倒くさい話を愛から聞いていたから
関わろうとも思わなかった
「ま、こいつは友達だな、きもいし」
いつものように捨て台詞を決めた愛は
他の男子とメールをし始める
私はそんな姿を見て
自分の彼氏にメールを送って
秋山はるかの名前を頭の中からいとも簡単に消した