「如月、なんで泣いてんの?」



優しい口調でそう尋ねながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる斉藤くん




「ヒック……なんでも、ないよっ……」




あたしは彼に泣き顔を見られたくなくて、咄嗟に顔を下に向けた





「なんで顔、下げるの?」




「っ……みられ、たくないっ」





「そっか……」




だんだん斉藤くんの声が近づいてくる




「……如月」




名前を呼ばれたのと同時に、あたしの体は暖かな温もりに包まれた





「さ、斉藤、くんっ?」




「こうすれば、俺は何も見えない。如月の顔、見れない。だから、我慢すんな」




ポンポンと、小さな子供をあやすような手つきで優しく頭を撫でてくれる斉藤くん




その優しい手つきに安心したあたしは、我慢出来ずに子供のように大きな声をあげて泣いた