「返して、返せよぉッ!」
「ギャハハハッ!」
「オイオイ、あんまいじめんなって!」
「うるさいわね! 人がブルーに悩んでる横で、みみっちぃカツアゲなんかしてんじゃないわよッ!」
青筋を浮かべると同時に、思いきり怒鳴りつける。
人気のない高架線の下。
茶髪や金髪などの高校生三人が、小学校高学年の少年を囲んでいた。
うちひとりの不良の手には、数枚の紙幣が握られている。
典型的な恐喝窃盗の現場だ。
ただし、そこへ怒鳴り込んでくる女子高生は滅多にいないため、加害者と被害者の双方がぽかんとこちらを見返している。
「聞こえなかったの? さっさと持ち主にお金返して失せなさいよ」
苛立った気分のまま、八つ当たりした自分を悔いる。
本当は、首を突っ込む気などさらさらなかった。
通りすぎようとして失敗したとも言える。

