当の本人は、ただの女子高生相手にそんなかしこまられてもと思う。
柚月がどう伝えるべきか悩んでいると、眼前に一輪の花を差し出された。
「どうぞ。転んだせいで、ちょっとしおれちゃいましたけど」
「あ、ありがと……」
戸惑いながらも受け取ると、はにかむように口元を緩ませる。
その表情で、今までささくれだっていた気持ちが穏やかになった。
宗真は顔を合わせる度に、こうして花を贈ってくれる。
現代の日本男児に……いや、すぐ側にいる人をこき使うことしか考えていない男にも見習わせてやりたい。
「それでは、お師匠さま。ご用があれば、お呼びください」
律儀に頭を下げる少年に、東雲は視線さえ向けない。
宗真も気にした様子もなく、くるりと踵を返し、もと来た道を歩いていくのだが────
「ぉぶッ!」
また見事にすっ転んだ。
彼は一日に何回、転ぶのだろう。顔を会わせる度に、必ず転倒する姿を目撃する。

